酒の味・・・年中勃起氏


1997年6月某日
僕:高校一年生 @体育祭の打ち上げ

打ち上げは、学校からすぐ近くのS公園でやりました。
始まったのは夜の八時ごろで、全校生徒がほとんど顔を出していたと思います。
みんなが体育祭の余韻をまだ引きずっていて、公園内は祭り状態でした。

体育祭は僕のいたC組が優勝していました。
僕は1年C組の応援団長だった上に、騎馬戦やリレーでも大活躍だったので、
「一緒に写真とって下さい」
なんていう女の子もあらわれたりして、かなりいい気分でした。

そんなわけもあって、普通の生徒が家に帰り始める夜の10時を回っても、
僕はしぶとく公園内に残っていました。

「もしかしたらこの中の誰に声をかけられて、
 そのままヤレるのではないか・・・」

なとどいう妄想が頭の中に膨らんでいたのです。
飛躍しすぎだろ、というツッコミもあるでしょうが、
そこは童貞の都合の良い夢ということで勘弁していただきたい。

日付が変わる頃になると、髪の黒い人なんてもう誰も残っていませんでした。
タバコを吸ったり、酒を飲んでる人もいるようでした。
高校一年の6月といったらまだ厨房気分まっしぐらです。
僕は公園内の空気が大人ムードに変わってしまい、自分の居場所を見つけかねていました。

打ち上げの間、僕は同学年の男女数人と、公園の端の方でたむろっていました。
話のネタも尽きかけた時になって、E組のイケモト君が、
「あー俺便所行くけど誰か一緒に行かない?」
と立ち上がりました。
丁度僕も小便がしたかったので、イケモト君にくっついて便所に向かいました。

S公園はかなり広い公園なのですが、
イケモト君は公園内の地理に精通してるらしく、難なく便所に着くことができました。
二人並んで用を足した後
「あ、俺ウンコもしたくなってきた。悪いけど先帰っててくんない?」
イワモト君は返事も待たずにさっさと個室の中へ消えていきました。

帰り道、迷ってしまうのも嫌なので、
トイレの前でイワモト君を待とうかなとも思ったのですが、
便所内に響き渡るイワモト君の脱糞の音が
聞くに堪えないというか、やるせない気持ちになってくるので、
僕は一人で仲間のもとへ帰ることにしました。

とはいっても、暗いし、初めての所なので、案の定道に迷いました。
行ったり来たりしている内に、初め僕がいたグループとは全く違う団体に出くわしました。
どうやら女の子が2人ほど、酒を飲んでいるようで、かなり盛り上がっていました。
「おーい、ちょっとそこのきみい!!」
その中の一人が、僕に向かって盛んに手招きを始めました。

招かれるままに近づいていってみると、全く知らない人たちでした。
いや、正確に言うと、僕の方が一方的に知っている人がその中にいました。
2年生で、ユカさんとエリさんという、校内でトップレベルの、
言い方は悪いですけど、「ヤリマン」と言われている人たちだったのです。

ユカさん「ねえねえねえ、君さあ、今日すごかった人じゃないの?」
ユカさんは、髪の毛が短くて、今思い出すと顔は微妙に優香に似ていました。
エリさん「あー本当だあ!!カッコ良かったよお。」
エリさんは、長い髪で、顔は微妙に上原さくらでした。

「はあ・・・どうも。」
僕は二人のテンションに圧倒されて、立ちすくんでしまいました。
「ねえ、君さあ、そんな所に突っ立ってないで私達と一緒に飲もうよう!」
エリさんは慣れた手つきで僕に焼酎のカルピス割りを作ってくれました。
「ほらほら、ここ座んなよ」
とユカさんの隣に席を空けてくれました。
「さあさあ、飲んで飲んで」
エリさんは僕にさっき作った酒を手渡してくれました。

僕は酒を飲むのは本当にこの時が初めてで、多少躊躇ったのですが、
女の子が見ている手前もあり、紙コップ入りの酒をぐいっと一口飲んでみました。
「うげえええええ・・・ばあああああ・・・」
僕は初めて飲んだアルコールのあの鼻を突くような嫌な感じに耐え切れずに、
酒をゲロのように地面に吐き出してしまいました。

僕のその様子がおかしかったのか、
ユカさんとエリさんは顔を見合わせて爆笑していました。
「きゃははは・・・君・・・凄くイイ!カワイイねえ。」
あの女性特有の笑い声はどう書いていいのか分かりませんが、
とにかく二人は腹のよじれるほど笑い、息苦しそうでした。

なにはともあれ二人を笑わせることができた僕は、
ようやくこの空気の中で市民権を得たような気がして、少しは落ち着きました。
少し間があった後に、ユカさんが僕に話しかけてきた。
「ねね、君一年生だよねえ、なんか部活やってるの?」
「え、ああ、バスケ部です」
「へー、あー、だから足速いんだ」

「君バスケ部なのお?それじゃあさ、あいつ知ってるでしょ、あいつ。
 えーと、誰だっけ?ニシモト。」
バスケ部という言葉に反応して、エリさんが会話に入ってきました。
ニシモトさんというのは、部の先輩で、部の中でも一、二を争うほどの実力者でした。
外見もいかにも女の子に人気の有りそうな感じで、
当時の僕の印象としてはとてもクールでカッコイイ先輩でした。

「はいはい、知ってますよ。ニシモトさん。カッコイイですよねえ。
 あの人バスケむちゃくちゃうまいんですよ。」
エリさんは僕の話なんかまるで意に介さず、衝撃的な事実を僕に伝えました。
「ニシモトさあ、私前ちょっとだけ付き合ってたんだけど、
 あいつあんな顔してMなんだよ、信じられる?」
エリさんはそう言って笑いながら僕の肩をバンバン叩くのでした。

ががががーーーん
あのニシモトさんが・・・・・・M?
正直、ニシモトさんとエリさんが付き合っていたということには余り驚きませんでした。
僕が驚いたのは、いつもクールな言動で、
後輩ばかりか先輩たちまで一目置いているらしい
ニシモトさんがMだと言うことでした。
どうもこの二人に会ってからというもの、事態が余りにも急転しすぎて、
僕は頭が変になってしまいそうでした。

僕がエリさんの話にショックを受けている間、ユカさんはすぐそばの
少し高くなっている丘の上で、当時流行っていた歌を歌っていました。
たしか安室奈美恵の歌だったと思います。
体育祭で絶叫したからなのか、はたまたそれが地声なのか、
ユカさんの声はしわがれた感じでした。
ユカさんはあどけない顔立ちをしていましたが、そのハスキーボイスとのギャップが
たまらなくセクシーに見えました。

ユカさんは歌に満足したのか、
ふらふらとした足取りで僕達のところに戻ってきました。
大分酔っ払っていたようでした。それでもなお、ユカさんはまだ手付かずの梅酒を
一気に飲み干しました。飲み干した缶を地面に投げ捨てると、
酔っているユカさんは、バランスを崩し僕の方へしなだれかかってきたのです。
「キスしようよ」
「はあ?」

ユカさんの言っている事は耳に入ってきましたが、
頭で瞬時に理解することはできませんでした。
ただでさえお互いの体がくっついているのに、追い討ちをかけるようにして
キスしようなどと言ってくるのです。
僕の足りない頭はもうとっくに容量を遥かに振り切っていました。

ユカさんは、業を煮やしたのか、さらに僕に迫ってきました。
「キスしようよう!キース!」
などと言って、唇をむりやり僕の頬へ寄せてきました。
ユカさんのつけている香水のにおいと、酒のにおいと、
体育祭が終わったばかりの汗のにおいが入り混じり、
竜巻のようになって鼻の穴へ入り、それがそのまま僕の心を
掻き回しているのを、僕は確かに感じました。

僕はエリさんのことが少しだけ気になって、ちらっとエリさんのいる方向を見ました。
ついさっきまで酔っ払ってくだを巻いていたエリさんが寝息を立てていました。
本当に寝ていたのか、それともそれは演技であったのかは分かりません。
「ちょ・・・ちょっと待ってください。」
僕は顔を少しだけ背けました。「ちょっと待ってください」と言うことで、
僕は二人の間に「間」を作ろうとしたのです。
その間になんとか気持ちを落ち着かせようと必死でした。

この作戦は、一瞬上手くいくかに思われましたが、
男女の関係においてはユカさんの方が僕よりも一枚も二枚も上手でした。
僕にとっての「間」は、ユカさんにとってみれば単なる「隙」以外の
何者でもありませんでした。
ユカさんはその隙を利用して、なかば強引に僕の唇を奪ったのです。

「さ・・・酒臭え・・・」というのが僕の第一印象でした。
しかし、ユカさんの舌が僕の口の中に入ってくるにしたがって、
何かとろ〜んとした雰囲気に包まれてしまい、
なにかとても居心地の良い別世界へ飛んでいってしまったような心持ちになりました
当時アルコールに対して全く免疫のなかった僕は、ユカさんの口の中の
アルコール分だけで酔っ払ってしまったようでした。

ユカさんの舌も凄かったのですが、もっと凄かったのは、ユカさんの体でした。
彼女が巨乳の持ち主であることは分かっていましたが、
その時僕の胸元とくっついていた彼女の胸の柔らかい感触は、
なにかとても大きなものに包まれている感じがして、僕は不思議と安心感を覚えました。
さらに、腕や太ももなど、露出している部分なんかは、吸盤の様に僕の肌に
吸い付いてきて、二人はこのまま二度と離れることはないのかもしれないなどという
思いさえ抱かせました。

二人の唇が触れ合っていたのは、せいぜい10秒足らずだと思いますが、
僕にはとても長い時間のように感じられました。
唇が離れた後も、僕はしばらく放心状態で、頭がぼーっとしていました。
もはや、バブル崩壊や、邪馬台国の所在地なんてどうでもいい問題に成り下がっていました。
気が付くと、目の前でユカさんがニヤニヤ?いやニコニコと笑っていました。
「ちょっとさあ、あなたキスだけで固くなり過ぎだよお。」

「固くなる」と聞いて、僕が真っ先に想像したのは僕のチンポでした。
言われてみれば、僕のチンポは空前絶後の勃起っぷりだったのです。
しかし、彼女の話を聞いているうちに、
僕の全身が固くなっていたと言うことが推測できました。
考えてみれば僕はこの時がファーストキスだったのです。
肩に力が入るのも無理はない話です。

僕はあのキスだけで全身にアルコールが回ってしまい、もうフラフラでした。
その後のことは余り覚えていないのですが、
ユカさんに見守られるようにベンチで眠った後、一旦目を覚まし、
公園内を廃人のように徘徊していたということです。
気が付くともう朝になっていました。体育祭の後片付けのため、
僕は急いで学校へ向かいました。

学校にいる間中気になっていたことがあります。
それは、「果たして僕は最後までヤッてしまったのか」という問題です。
ヤッたような気もするし、あの後何もなかったという気もします。
疑問は残されたまま、週末をはさんで月曜日になりました。
休み時間中、ユカさんとエリさんが、僕のクラスの前まで来て、
中をチラチラと覗いているのに気が付きました。

廊下へ出て行ってみると、二人はこの間の件についてしきりに謝ってきました。
「この前は酔っ払って、なにか失礼な事をしてしまったらごめんなさい」
という事でした。どうやら彼女達はあの夜何をしていたか
全く記憶に無いようでした。とりあえず僕は、
「いや・・・ホントに・・・何も無かったですから。
 はい・・・。気にしないで下さい。」
と言って、二人と別れようとすると、ユカさんが僕に紙切れを渡してきました。

あとで読んでみると、「わたしのベル番です。今度一緒に遊びにいこう」
と書かれていました。ご丁寧に最後にはハートマークまでつけてありました。
これをきっかけに僕達は付き合い始めることになったのですが、
最終的には夏の真ん中あたりに、僕が一方的に捨てられるという結末を迎えました。

二人が付き合っている間、デートしたのはほんの数回で、
もちろん肉体関係なんかはありませんでした。
結局、あの夜、僕は果たしてヤッてしまったのかという謎は解明されませんでした。
「覚えていないんだからヤッてないんだろう。」
と自分で勝手に結論付けることにして、僕は粛々と童貞を続けていくのでした。

これは余談なんですが、他の人がファーストキスを
レモンやイチゴの味に例えているのを聞いて、
僕はなんだかとてもうらやましかったのを覚えています。
なぜなら僕にとってファーストキスは酒の味と言う、
およそ青春とはかけ離れた味だったからです。

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