最後のH・・・亜季氏


私が高校の頃初めてつきあった彼氏は、
重い病気を持った人でした。
病名は『白血病』でした。
彼の命は、長くてあと半年と言われていました。
だけど私は彼を愛してたし、彼も私を愛してくれていて、
戸惑いも多かったけど、私は最期まで彼の側にいることにしたんです。

でも私の親は反対しました。
『辛いのはあんただから』
って言って、なかなか会いに行かせてもらえなかった。
(あ、書くの忘れたけど彼はずっと入院してました)
たまに病院からかかってくる彼からの電話も、取り次いでもらえませんでした。
それでも当時は、学校帰りに、電車で30分かかる病院まで行ったものです。
私には彼がすべてだった。
彼と会ってる時間は他の何よりも大切でした。

その反面、彼を失うことへの怖さもどんどん大きくなっていきました。

余命あと1ヶ月ほどになったころには、
薬の副作用で髪も殆ど抜け落ちてしまっていたので、
私は彼にニット帽をプレゼントしました。
彼はその帽子を片時も離さず身につけていてくれました。

でも私はそんな彼を見てるのは辛かった。
彼の前ではなるべく笑顔でいようと心がけてたんだけど、
ある日、どうしても我慢できなくて
一度だけ彼の前で泣いてしまったことがあったんです。

私の涙を見て、彼はもう体力もすっかり落ちてしまってるのに、
強く私を抱きしめてくれました。
今までもそんな事は何度もあったし、キスも何度もしてるのに、
なぜか初めてキスする時より緊張しました。
温かくて、優しい彼の体温に、私は涙が止まらなくなって、
今までずっと、こんなこと言っちゃいけないと無意識に自覚してた言葉を、
とうとう口に出してしまったのです。

『抱いて・・・』

その夜、(と言っても夜中ではないけど)
人気の無くなった病室で、最初で最後のHをしました。

その日、帰りが遅くなった私は両親にこっぴどく叱られ、
もう病院には行かない、と約束させられました。
それでも私は毎日通いました。
不良娘と呼ばれてもいい、ただ、刻々と迫ってくる“その日”まで、
少しでも彼と一緒にいたかったから。

それから1ヶ月後でした。彼の容態が急変したことを知らせる
電話のベルが鳴ったのは。

電話に出たのは彼のお母さん。
すぐ病院に来て、とのことでした。
でもそれは午後9時過ぎのことで、両親が許すはずもなく、
私はただ電話を握り締めて泣くことしかできなかった。
手足は震えて、頭の中は真っ白でした。

そんな時突然、そんな私を見かねてか、母が私を車で病院に送っていく、と言ってくれたのです。
私は動転していたので訳がわからず、でも考えてる余裕も無いのでとりあえず頷きました。
あの時は言えなかったけど、お母さんどうもありがとう。

そして病院に着くと、彼の病室はバタバタとドクター達が出入りしていて、
私はすぐに部屋へ迎え入れられました。

その、数秒後・・・10秒もたたないうちに、
心臓停止を伝える音が、部屋に響きました。

ドクターの話によると、
まるで私を待っていたかのようだったそうです。

もうこんなこと書くとうざいかな・・・

彼が亡くなってから数日後、彼のお母さんから一通の手紙を貰ったんです。
それは彼が入院中に書いた、私宛のものでした。
びっくりして中を見ると、彼の字で、
彼が好きだったSOPHIAというバンドの『君と揺れていたい』という歌の歌詞の
一部が書かれていました。



〜ねぇ 君に言っておきたいことがあるんだ

           もしも 生まれ変わったとしても

                       君を探しに行こう〜



あれから、3年。
私は、彼のことは一生忘れないと思います。
でも彼と出会えたことは決して後悔していません。
そして、こんなくだらない私の話を目にしてしまった方々、すみませんでした。
ありがとう。

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